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体の声にしっかり耳を傾ける 体は嘘をつかない

西洋医学では病気が完治しない

免疫学の立像から、「疲れのメカニズム」について、もう少し詳しく踏み込んでみたいと思います。その過程で、疲れない、疲れても回復しやすい体という意味での「体力のある人」になるための考え方も明らかにします。

疲れや体力の問題を見ていくことで、一般的な常識からは見えてこない、人間の体が持つ驚くべきメカニズムがわかります。

最初にお伝えしておきたいことは、「人間の体を、全体的な視野で診る」ことの大切さです。これは近年注目を集めている、「統合医学」「全体医学」などと呼ばれている医学の視点です。

統合医学的な見方が注目されているのは、ここ十数年で急速な発達を遂げた、体を臓器別に分析的に見ていく現代の西洋医学に対する反省が始まっているからだと思います。

西洋医学は、どうしても、体の部位や局所的な症状だけを診るため、視野が狭くなりがちで、体内で起きるさまざまな現象の真の原因を究明しにくくなっています。その結果、症状を「悪いもの」「あるべき体調からすれば間違った状態」ととらえ、症状だけ無理に抑え込むような対症療法などに走るのです。かえって疲れや病気を悪化させ、慢性化させてしまうことも少なくありません。

攻撃的な体力」「防衛的な体力」の使い分け

では、本当の意味で、疲れない、疲れても回復しやすい体をつくるためには、どうすればいいのでしょうか。そのためには、私たちの体調をコントロールしているシステムのうち、

  1. 自律神経
  2. エネルギー代謝
  3. 免疫

の3つを統合的に理解するといいのです。私たちの体は、極めて精巧かつ合理的につくられており、本来、こうしたシステムの絶妙な働きで、毎日元気いっぱいに、充実した人生を生きることができるようになっているのです。

さらに踏み込んで言うと、「体は間違えない」のです。間違っているのは、無理をしすぎたり、ラクをしすぎたりする、常軌を逸した極端な「生き方」のほうです。

極端な生き方という原因に対して、体は「素直に」反応します。極端な生き方で体内に発生した害のある物質や、荒れた体内環境を整えようとし始め、その結果として体の不調、さまざまな症状が出てくるのです。

この症状を、「悪い」「間違っている」とだけ見ること自体が、実は間違っていると私は考えています。体の驚くべきメカニズムを知った時、自分の生き方や体に対する考えが、根本的に変わってしまうでしょう。本来、体が持つパワーを引き出す生き方、疲れない、疲れを回復しやすい生き方を始めるきっかけになります。では、3つのシステムとは、いったいどんなものでしょうか。

1.自律神経システム

活動と休息に適した体調をつくり出すために、体のほとんどすべての細胞を支配している、言わば、体のコントロールタワーのようなものです。

2.エネルギー代謝システム

体がが活動する際に必要なエネルギーをうまく供給するシステムであり、疲れと直接的に関係していると言えるでしょう。

3.免疫システム

エネルギー代謝の材料となる食物や酸素を取り込む際、活動の過程で体内に侵入してくる外敵や異物、体内で発生するさまざまな老廃物や異常な細胞(がん細胞)などを排除し、体を守る役割を果たすことで、疲れが悪化して生じる病気から、体を防衛する役割を担っています。

疲れない体、あるいは疲れが回復しやすい体とは、言い換えれば「体力がある体」と言えます。私たちが、疲れを知らないように見える元気な人を指して、漠然と使う言葉です。

この「体力」という言葉を、もう少し細かく分析してみると2つの体力に分けることができます。つまり、活動のエネルギーが豊富だという意味の「攻撃的な体力」と、病気にかからないという意味の「防衛的な体力」。

この2つで構成されていると考えることができるのではないでしょうか。先ほど述べたエネルギー代謝のシステムは前者を担い、免疫のシステムは後者を担っている。

そして、自律神経のシステムは、両者のコントロールタワーになっていると言えます。体力がある体とは、3つのシステムがうまく機能し、活動のエネルギーが豊富で、かつ体を守る働きも強い、すなわち、攻めも守りも両方強い体だと言っていいと思うのです。

免疫体質のための週末の過ごし方

月に1回近所の銭湯に行ってみる

どんなにハードな生活をしている人でも平日から疲れをためない生活を意識している人は、疲れがたまらないし、倒れることはありません。

少ないながらも、月に1~2回は取れる休みの日は、近所の銭湯などに行って、ゆっくりと体を温めます。スーパー銭湯が多いですが。そのスーパー銭湯とは、さまざまな種類の風呂があり、数百円くらいで楽しむことができる浴場です。

体の調子を気づかいながら、いろいろなお風呂に入ったり、椅子に座って涼んだりして、長い時で2時間ほど過ごします。月に1~2回、2時間ほど連続して体を温めるというのは、体温を上げ、代謝を促進し、免疫力を上げて、疲れを取るために非常にいいと言えます。

できるだけ湯船に浸かったほうがいいと紹介していますが、自宅の浴槽は狭くて退屈なので、2時間も入っていることはできません。
ですから、休日を利用して、気分転換がてらスーパー銭湯や温泉などに行くのもお勧めです。

運動不足解消のための最低限の運動

たまの休日には、運動をしてみるのもよいでしょう。

運動の仕方にもコツがあります。無鉄砲に体を動かせばいいというものではないのです。体があまりつらくなるほどの激しい運動をすると、交感神経が優位になります。体が気持ちよくなるくらいの負荷がかかる有酸素運動、たとえば、ウォーキングや軽めのジョギングをすると、副交感神経を刺激することができます。

勝敗を競うスポーツは、興奮して交感神経を刺激しがちです。ですから、あまり他人と競ったりせず、個人で楽しめるような運動だと、副交感神経を刺激し、リラックスすることができるでしょう。

日ごろ仕事で疲れ果てているような人は、徐々に体を動かすようにしてください。交感神経が優位になり、体のあちこちに組織破壊が起きているかもしれないからです。

真面目な人は、「頑張って体を鍛えなくてはならない」「これをしなければならない」とキリキリした気持ちで始めがちですが、それはやめましょう。かえって疲れをため、体を壊すだけですから。できれば、豊かな自然の中や広い公園などで、ゆったりとした気分で、腹式呼吸をし、自分の体と対話するような気持ちで、少しずつ体を動かしてみてください。Jすると副交感神経が優位になり、感覚が研ぎ澄まされ、体の潜在的な声に気づけるようになるでしょう。

組織破壊が起きている場所から、悲鳴が聞こえてくるはずです。その悲鳴に、静かに耳を傾けるのです。「何だか、無理をしているな」「何を、そんなに焦っていたのかな」と気づけるようになれば、しめたもの。こうした感覚がよみがえってきたら、病気になる前に、生き方の修正を始めるのです。疲れをためない生活を実践して、体の血流が回復し、組織破壊がなくなり、体が普通の状態に戻ってきたら、「頑張って体を鍛える」こともいいですね。

ただ、鍛えすぎて筋肉隆々になってしまうと、逆に疲れやすくなります。大量の筋肉が、たくさんのエネルギーを消費するようになり、交感神経が緊張しがちになるからです。普通に仕事をしている人なら、そこまで鍛える必要はありません。

また、女性の場合、やせすぎて脂肪の量が減りすぎると、体温を保つ機能が落ちて低体温になり、かえって疲れやすくなるかもしれません。

たまには「体に悪いこと」をしてみるということも

これまでは、体が疲れないための習慣や考え方を紹介してきましたが、今度は逆説的に、「月に1~2回は、体に悪いこともしてみる」ことをお勧めしておきたいと思います。

もちろん、普段から、しっかりと疲れをためない生活をしており、十分な健康を保っている人にしか、お勧めできない方法ですが。

これまで紹介してきた、疲れない体をつくる生活習慣を実践していると、時々、窮屈さを感じて、いや気がさしてくる人もいるでしょう。
そうなると、結局は実践できなくなり、効果もまったく出なくなってしまいます。そもそも、ひとつの健康法に固執しすぎるのは、医学的に見ても、よくありません。精神的にはストレスがたまり交感神経が優位に傾きがちですし、体も常に変化∫ するので、ある時は体によかった健康法が、ある時は、よくないものになるかもしれません。

何事も、基本はしっかり押さえるべきですが、同時に、細かい点においては一定のおおらかさを持ったほうがいいと思います。「疲れない体をつくる生活習慣」についても同じです。基本的に私は、これまで述べてきた生活を、非常に気をつかって実践しています。これは毎日、少し神経質なくらいに生活習慣を意識しているからです。

しかし、時々、そののりをこえ、あえて羽目をはずします。実際に、そのほうが体の調子もよいのです。実は、私は、月に何回か、町に繰り出してお酒を楽しんでいます。その日は、大いにリラックスして仕事の疲れを癒し、大いに興奮して将来の夢を語ります。翌日は、二日酔いになります。前の晩は、12時くらいまでは起きていることになるので、寝不足にもなります。

通常は、睡眠時間は6~8時間取っており、満ち足りています。そうしたところに、ちょっと夜更かしする日をつくつてやると、かえって調子がよくなります。
あまり、睡眠時間が満ち足りていても、体が寝飽きてくるのでしょう。普段は体によいことをして生活している人が、時々、体に悪いことをするのも、実は必要なのです。いつも穏やかで満ち足りた健康状態を保っていると、それ以上、体の機能は鍛えられません。

限界状態の負荷に接して、体の能力を稔動員して戦うという機会が、なくなってしまうからです。何か負荷がかかって、そこからリカバリーを図る時に、体の機能がより強く鍛えられるのです。

食べ物については、普段、玄米・和食の人は、時々焼肉などを思う存分食べたらよいのです。それで、臭いうんこでもするくらいでいい。睡眠が満ち足りている人は、時々は夜更かしして遊び、翌日は苦しい思いをするといい。いつも快活で明るい人は、たまには、ウンウン悩むくらい精神的なストレスも受けたほうがいい。

風邪も引かないような生活を送っているなら、インフルエンザが流行った時など、わざわざ流行っている場所に出向いて、かかるのも悪くない。かかって熱に浮かされても、解熱剤などは使わない。体は、熟を上げて、リンパ球総動員でウィルスを攻撃し戦っているのです。

治った暁には、免疫力が高まっているでしょう。疲れにくい体をつくるには、基本的には、疲れをためない生活を送りながらも、時々羽目をはずして、疲れてみるとよいでしょう。基本的な健康状態に時折、負荷をかけ、生活のメリハリをつけることが必要だということです。つまり、私が提唱している生き方とは、考え方と実践において、厳格すぎず、おおらかな感覚も併せ持った生き方なのです。ただし、すでに、疲れがたまっている人は、まず、疲れをためない生活を一生懸命、実践するのが先ですので、そこはお忘れなく。

免疫体質をつくるための「週末の食生活」

粗塩をなめる

疲れをためない生活をするには、食事も非常に大切です。

人間が摂取するものには、交感神経を刺激するものと、副交感神経を刺激するものがあります。交感神経を刺激するものの代表は塩。この場合は精製されたナトリウムを指し、これを摂ると交感神経が刺激されて血圧が上がります。
ナトリウムは、交感神経が緊張しがちな人が摂りすぎるとよくありません。しかし、体に活力をもたらすものでもあるため、副交感神経優位になりがちな人や、ラクな環境で育っている子どもには、むしろ必要と言えます。

副交感神経を刺激し、免疫力を高めるものの代表は、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラルを豊富に含んだもの。ほかには、腸の蝶動運動を促す食物繊維を含むもの、腸内環境をよくする微生物を含む発酵食品、苦味や酸味など、体が「いやなもの反射」を起こす食品です。ちなみに、同じ塩と言われるものでも、租塩や天然塩は、ミネラルも豊富に含むので、交感神経、副交感神経の両方を刺激します。疲れやすい人は、努めてこれらを摂るといいでしょう。

週末だけでも玄米の習慣

ミネラルや食物繊維を豊富に含み、副交感神経を刺激するものと言えば、素材を丸ごと食べることができる「丸ごと食品」が挙げられます。

その代表は、玄米でしょう。玄米は、収穫後、もみがらを取り除いただけで、後は丸ごと食べてしまう食品です。その胚芽やぬかの部分に、糖質、たんばく質、ミネラル類、ビタミン類などを含み、人間が生きていくのに必要な栄養素のほとんどをカバーしています。

食物繊維にも富んでおり、腸の働きを高めるため、長時間、副交感神経優位の状態をつくり出す働きがあります。玄米は精白米よりも農薬が残留しやすいと言われますが、私自身は、あまり気にしていません。玄米は副交感神経を強力に刺激して、体の排泄能力を高めるため、少しくらいの農薬なら、体の外に出ていってし事つからです。

もちろん、病気などで毒素を排泄する機能が弱まっている人は、体の声を聴きながら少しずつ食べるなど、量を調節したほうがいいでしょう。丸ごと食品には、ほかに、豆類やごま、乾燥させた小魚や小エビなども入ります。

海藻で腸をまるごと洗浄

食物繊維は、人間の持つ消化酵素ではほとんど消化できません。腸の中では水分を含んで膨張し、便の量を増やして腸管を刺激します。

また、活性酸素を除去したり、消化を助ける善玉菌を増やすのにも役立ちます。食物繊維を含むものは、噛みごたえがあるため、噛む回数が多くなり、副交感神経が刺激されます。食物繊維を含むものとしては、野菜類、海藻類、きのこ類などがあります。野菜類にはビタミンやミネラル、海藻類にもミネラルが豊富に含まれます。

ただ、胃腸の弱い人などは、食べすぎると便秘を起こすので、注意が必要です。発酵食品とは、微生物の働きによって、発酵・熟成させた食品のことで、味噌やしょうゆ、納豆、漬物、ヨーグルトなどがあります。

発酵食品は、食材の栄養素に加えて、微生物の活動の過程で生み出されたビタミンやミネラル、酵素などもー緒に摂ることになります。また腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整え、腸管の免疫機能を高めるので、副交感神経優位の体質を保つことができます。

私たちの体には、体にとって不要なもの、いやなものが入ってきた時に、排泄しょうとする働きが備わっています。それを司っているのが、「副交感神経」です。すでに述べましたが、レモン、梅干し、お酢など酸味のあるもの、また一部の山菜など苦味があるものを食べると、副交感神経が刺激されます。ちなみに、漢方薬の苦さも、「いやなもの反射」を利用して副交感神経を刺激する目的があります。

ゆっくり味わう

食材を選ぶ時は、「毎週、これを食べなくては」と、神経質になる必要はありません。「体によいから」といって、おいしいと感じられないのに、厳格に無理をして食べ続けるのはよくないのです。

無理のない範囲で、徐々に取り入れることが大事です。食事の際は、ゆっくりと時間をかけて、よく噛んで食べましょう。すでに述べたように、よく噛むことで、副交感神経が刺激されます。ただし、食べ物が完全にドロドロになるまで噛む必要はありません。

食べ物による腸管への刺激が弱くなるからです。噛むことも、「自分の胃腸に聴きながら」でよいのです。以上、おもに交感神経優位の人向けに、副交感神経を刺激する食べ方をご紹介しました。現代人は、肉食になりがちですが、肉食だと交感神経優位に傾きます。そういう人はできるだけ、玄米・和食に変えるほうがよいでしょう。

玄米を主食にすると、おかずはあっさり味しか合わなくなります。自然に野菜や、海藻、発酵食品などを中心とした和食スタイルになるから不思議です。私も経験しましたが、何より、玄米・和食スタイルにすると体質が劇的に変わります。

私も玄米を試したところ、1週間ほどで驚くべき効果が出ました。平常体温は36.5度になってポカポカ、肌はツヤツヤ、便通もよくなり、便の臭いもなくなりました。肩こりもなくなつて、すっかり健康になつたのです。当時円キロあって太り気味だった体型も、その後、余分な脂肪が取れ、適正体重の64キロまで減ってスッキリしました。それ以来、私は、三食、玄米・和食にしており、肉はあまり食べません。週に1度くらいは、体のほうが「気分を変えたい」と言ってきますので、そんな時は肉を食べています。

快腸を維持するための玄米