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大自然のリズムに合わせて生きる

自律神経のメカニズム

ここからは、エネルギー代謝と免疫のシステムをコントロールする、自律神経に注目し、自律神経が体に起こす興味深い現象を詳しく見ていきましょう。普段は、自律神経を安定させる生活習慣を意識することがとても大切です。

最初に指摘したいのは、交感神経優位になると知覚が鈍くなり、副交感神経優位になると知覚が敏感になる現象についてです。交感神経が優位になると、神経伝達物質の分泌が抑制され、知覚が鈍る知覚鈍麻が起きます。

副交感神経優位になると、神経伝達物質がより多く分泌されるため、知覚が鋭敏になり、痛みやかゆみなどを感じやすくなり、味覚や喚覚も鋭くなってくるわけです。

男性より女性のほうが感覚が鋭敏で感性豊かな性格を持っている人が多いのは、そもそも男性は交感神経タイプ、女性は副交感神経タイプが多いからです。

交感神経優位が続いて、知覚が鈍くなることは、実は人間が物事に集中して活発に活動するためには、合理的な状態でもあります。

仕事で重大局面に差し掛かっている時に、いちいち体の不調が気になっていたら、行動を起こせなくなるでしょう。そういう時、私たちの体は、自動的に体の不調を感じ取る感覚を遮断し、全力で仕事に取り組めるようになっています。同じように、森を歩いていて熊に出会った時、恐怖の感覚をじっくり味わっていたら身が凍って動けなくなり、能だやられてしまいますよね。

だから、不要な感覚を遮断して、猛然と戦うなり、一目散に逃げ出すなりの行動に集中するようにできているのです。危機に遭遇すると、人間の体は、その状況を乗り越えるために、不要な感覚を断じて、いわば興奮の極致の状態をつくり出すという極めて合理的な反応をするわけです。

そして、危機が過ぎ去り、副交感神経が優位になってくると、「あれ? この傷、いつできたのかな? そいえば痛い」と、危機状態の時に受けたダメージに遅ればせながら気づくという現象が起きます。激務明けの休日に体の不調が噴き出すように感じられるのは、このためです。

では、交感神経優位の極限状態が続いてしまうと、どうなるのでしょうか。神経伝達物質が抑制され続け、知覚も思考力も鈍ったままで、体に深いダメージを受けていても、気づかずにそのまま走り続けることになります。

これが極致までいくと、人の話が聴けなくなり、何を言われても、受け入れて考えることができなくなります。過労死の直前などには、人は、このような状態になり、「もう休んだら? 」という家族の忠告を聴ける状態ではなくなっていることが多いのです。上手に「体の声」を聴けるようになる秘訣が、ここに隠されています。

まり、副交感神経が優位になる時間を、確保すればいいのです。人の話を聴けない状態にまでなっている人は、半強制的に休ませるしかないでしょう。

何ヶ月も休みなしで働いている人は、月に数日でも休みを取れば、少しは副交感神経が働き始め、さまざまな感覚がよみがえってきます。

「そう言えば腰が痛い」「手足が冷えている」「無理な生き方をしている」などと、体調をとらえる力や、自分の生活を振り返る思考力もよみがえってくるのです。「体の声が よくわからない」という人は、交感神経が優位になっている生活をいったん遮断する必要があるということです。

自律神経「1日のリズムを覚える」

自律神経は大自然と共に変化しています。それを知るのに、とてもわかりやすいのは、白血球を構成する細胞比率の1日の変化を見ることでしょう。

朝から日中の時間帯は、顆粒球の割合が増え、交感神経が優位になっています。夕方になると、今度は副交感神経が優位になり、リンパ球の割合が増えています。

すでに述べたように人間の体は、長い人類の歴史の中で、太陽と共に起き出し、日中に食物を摂る活動をして、太陽が沈むと寝る生活に適応するようにつくられています。

自律神経が、1日の中で、太陽の動きに合わせてエネルギー代謝と免疫の状態を調整しているわけです。人間の体は、このように交互に変化することで、自動的に、疲れをためないシステム、元気な状態を保つシステムを維持しているわけです。

自律神経は、天気の影響も受けます。天気がよくなって晴れると交感神経優位になり、天気が悪くなって曇りや雨になると副交感神経が優位になるのです。なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?

正確に言えば、自律神経には気圧が影響するのです。天気がよい状態、気圧が高くなる状態では、大気中に酸素量が多くなり、血液中の酸素分圧が高くなって、交感神経が優位の傾向になります。

また逆に、曇りがちで天気が悪く、気圧が低い状態では、酸素が少なくなり、血液中の酸素分圧が低くなって、副交感神経が優位になりがちです。私たちが、空が晴れ上がった天気のよい日は、気分がハイになり、元気に活動をし始め、曇りや雨の日は、何となく気分がゆったりして家から外に出たくなくなるのも、このためです。

「晴耕雨読」という言葉がありますが、これは、体のメカニズムにもかなった言葉だと言えるでしょう。この法則を知っておくと、その時々の気分を把握しやすくなり、気がラクになります。もともと性格が静かな人は、雨の日には気分がもっと静かになり、落ち込みやすくなります。

「ああ、今日は雨の日だから、しよんぼりしがちなんだ」と思えば、必要以上に落ち込む必要もなくなるわけです。そんな時は、ちょっと交感神経を刺激するような活動をすればいいのです。

気性が激しい人は、晴れ上がる高気圧の日には、「今日はちょつと注意しよう」と心がけて、ゆったり深呼吸でもしていればいいわけです。

また持病のある人は、低気圧で副交感神経優位になると知覚が過敏になるので、痛みなどが出やすくなります。その状態を「病気が悪化した」などと悲観することなく、「天気が悪いからこうなつているだけ」ととらえればよいのです。自律神経が気圧によって変動する様は、気圧と白血球の変化にも表れています。

気圧が高くなると、交感神経が優位になり、顆粒球の割合が多くなり、リンパ球の割合が少なくなります。気圧も、高気圧が来たら次は必ず低気圧が来るというように、交互に変化しています。人間の体の自律神経も、白血球の割合も、同じように交互に揺れて変化しているのです。

自律神経「1年のリズム」

自律神経には、一1を通しても、季節のリズムと共に変化する一定の周期があります。日本を含む北半球では、春は、気温が高まり空気が温まるので、気圧は低くなり始めます。春は、交感神経優位から副交感神経優位へと変化する時期であり、白血球もリンパ球の比率が上がり、顆粒球の比率が下がる変化の時期となります。

夏は、気温が上がり気圧が低くなるので、副交感神経優位となり、リンパ球の比率が高い状態となります。ちなみに台風は、低気圧の極致なので、かなり激しい副交感神経緊張の状態がつくられます。秋は、春とは逆の変化が起きます。

冬は、気圧が高くなるため、交感神経優位の季節となります。また気温が低いこと自体が一種のストレスになりますから、交感神経が刺激され、顆粒球が多くなります。こうした気圧の変化は、健康な人にとっては、気分や体調が変わる程度で済みますが、疲れがたまっている人や病気を抱えている人にとっては、大きなダメージとなります。

特に、気圧が変化する春と秋の季節の変わり目は、体調が揺さぶられ、苦しい状態も出てくるので注意が必要です。こうしてみると、私たちの自律神経は、大自然の大きなリズムと共に変化していることがわかるでしょう。自律神経の変化につられて、エネルギー代謝も免疫も変化していきます。

「体のここが痛い」「この症状を早く何とかしたい」という体の一部分のみしか見ないのではなく、もっと大きな視点で自分の体を見つめ、体の声を聴いてあげましょう。

大自然のリズムと、大自然のリズムに連動した自分の体の精巧なシステムを、総合的に見ていきましょう。そうすれば、つらい症状のみに集中してビリビリしていた気持ちがほぐれ、おおらかな気持ちになれます。つらい症状を引き起こす本当の原因も見えてきて、正しい解決法が見えてくるでしょう。

自律神経失調症の基礎知識に関する詳細はこちら。

免疫の実力

体内毒素は「すべて白血球が撃退する」

次に、免疫のシステムも、疲れと深く関わっていることについて、です。免疫とは、体の外から侵入してくる細菌、ウィルス、体内にはないたんばく質など、外敵や異物から体を守る働きのことです。
また、体内で古くなり死んでしまった細胞や、がん細胞のように変異を起こした細胞を除去する役割も担っています。

この免疫を担う細胞が、血液中を流れる血球の中の、白血球と呼ばれる細胞です。血液1立方ミリメートルあたり、44000~7000個ほど含まれており、大まかには、顆粒球とリンパ球、そしてマクロファージの3種類あると言ってよいでしょう。

顆粒球は、おもに大きなサイズの外敵から体を守る働きをしています。真菌や細菌、死んでしまった自分の体の細胞を、食べるという形で処理をします。顆粒球は、白血球の封54~60%を占め、血液1立方ミリメートルあたりに3600~4000個ほど含まれます。

顆粒球の寿命は、体の細胞の中で最も短い2日程度で、1 日に半分程度が新しいものと入れ替わっています。このように寿命のサイクルが早いのは、侵入してくる外敵を迎え撃てるように、元気のある若い細胞を次々と補充するためです。

一方、リンパ球は、通常は、白血球の約35~41%を占め、数としては、血液1立方ミリメートル中に約1800~2500個含まれています。リンパ球は、食事などで体内に侵入してきた異物やウィルスなどの、細菌よりずっと小さな敵を処理する役割を担っています。

また、体内の、老化した細胞、壊れた細胞、ウィルスに感染した細胞や、がん細胞などの細胞をマクロファージと協力して除去します。

リンパ球と顆粒球を合わせると、白血球の95%ほどになりますが、残りの5%がマクロファージです。マクロファージは、顆粒球が食べるものよりも大きなサイズの外敵を食べたり、体内の老廃物を除去したり、顆粒球やリンパ球に「敵が侵入したから、やっつけろ」と指示を出すなどの働きを担っています。

体力と白血球の総量は比例する

これらの白血球の数をコントロールしているのが、自律神経のシステムです。白血球は、血液に乗って体中を移動している細胞なので、以前は、自律神経の支配を受けにくいと思われてきました。

しかし、1996年、白血球も自律神経の支配下にあることがわかったのです。

顆粒球とリンパ球の細胞の表面には、両方の神経伝達物質を受け取るレセプター(受容体)があり、顆粒球は、ノルアドレナリンを受けた時に活性化し、アセチルコリンを受けた時に抑制されると考えられます。リンパ球はこの逆です。このようにして、自律神経が、白血球の細胞構成の割合を決めているわけです。

これは人間の活動にとって非常に合理的なシステムです。交感神経が優位になって体が活発に動く時は、体に傷がつきやすくなり、細菌などの侵入も増えます。

そのために、顆粒球の割合を増やして体を守っているのです。逆に、副交感神経が優位になって休息をしている時には、リンパ球がマクロファージと協力して、体内のおかしくなった細胞を除去します。
また、食事の際に体に入ってくる異物やウイルスなどの細かい外敵には、顆粒球は対応できないため、リンパ球が活躍することになります。体力と、白血球の総数は正比例しています。活動量が多い人、体を鍛えている人は、筋肉量も多いため、血流がよくなり、体温も上昇します。

すると、体を防衛するための白血球の数も多くなります。通常は、5000個前後ですが、6000備前後となってきます。この場合、白血球のうち数が増えるのは、おもに顆粒球のほうです。活動量が多いと交感神経が優位になり、交感神経から出るノルアドレナリンによって顆粒球が活性化されるためです。

ですから、白血球の総数に対する顆粒球の割合が通常よりも大きくなり、リンパ球の割合は小さくなるわけです。

逆に、活動量が減って、副交感神経優位となり、筋肉の量なども減ってくると、白血球数も3000~4000個と数が落ちます。この場合、リンパ球の割合が通常よりも多くなり、その分、顆粒球は減ります。体を防衛する力は、体の活動量に正比例しています。「体力があるのに白血球がかいり少ない」という禿離はありません。活動量が増えると白血球の数は増え、活動量が低下すると、白血球の数は減るということです。

このように、その人の生き方がはっきりと数字に出てくるので、血液検査で白血球の状態を詳しく見てみるとよいでしょう。白血球全体に占めるリンパ球のパーセンテージも、「白血球分画を調べてください」と言えば、簡単に調べられます。ただ現代の医学界では、血球の数字の変化をこのような視点で見ることができる人は、とても少ないのが現状です。

白血球のバランスが崩れると病気になる

白血球中の顆粒球とリンパ球のバランスが、通常レベルで保たれている時は、免疫力もよい状態で保たれています。しかし、交感神経か副交感神経の、どちらかの優位状態が続きすぎると、白血球中の顆粒球とリンパ球の割合のバランスが崩れます。

交感神経優位が続きすぎると顆粒球が多くなり、副交感神経優位が続くとリンパ球が多くなりすぎます。「多くなるなら、防衛力が上がりそうで、よいではないか」と思うかもしれませんが、何事も、過ぎたるは及ばざるがごとしです。

たとえば、顆粒球の数が増えすぎると、外敵と戦うだけではなくて、体の中にすんで重要な役割を担っている常在菌とも戦い始めます。常在菌とは、胃の中にすむピロリ菌、腸の中で食物を分解するなどして役に立っている各種の善玉菌などです。

また、顆粒球は、古くなって死んだ細胞も食べるのですが、増えすぎると正常細胞まで攻撃し始めます。こうして体のあちらこちらで化膿性の炎症が起き始めます。

にきび、おできから始まり、急性肺炎、急性虫垂炎、肝炎、化膿性扁桃炎、骨髄炎などがそうです。さらに悪いことに、顆粒球が増えると、粘膜上で顆粒球が役目を終える際に発生する活性酸素の量も増えてきます。まさに悪循環が続きます。

顆粒球の数が通常範囲なら、活性酸素の毒素を中和する酵素で組織は修復されるのですが、顆粒球が多くなると修復が追いつかなくなります。
また、顆粒球の数が多すぎる時は、たいてい体温も下がって酵素の働きも悪くなり、血流も滞って、新陳代謝の働きが弱まっています。

こうして、修復が追いつかなくなり、活性酸素による組織の老化が起き始めます。気になる皮膚のシミ、シワ、くすみや動脈硬化などです。

さらに、体のあちこちの粘膜で組織破壊が起き始めます。これが、「交感神経優位タイプの疲れレベル4」に登場した、口内炎、歯槽膿漏、胃炎などです。

レベル5 になると、がん、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、十二指腸潰瘍、白内障、糖尿病、痛風、甲状腺機能障害、クローン病などが出てきます。
それでは、リンパ球が増えすぎるとどうなるのでしょうか。花粉やホコリなど、通常なら外敵と見なさないようなものにまで、増えすぎたリンパ球が過剰に反応し始め、アレルギー性の疾患が生じます。ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、通年性の鼻炎などがそうです。

病気にならない体温は「36.5度」

白血球と体温の深いつながりを知っておくと、自分の免疫力の状態を把握するのに便利です。ベストの体温である36.5度の時、リンパ球の割合が38パーセントになり、それが免疫力の面から見て、ペストの状態だと言えます。

自律神経もメリハリが利いていてバランスが保たれ、エネルギー代謝もベストの状態です。リンパ球比率が38%のベストのラインから左に向かうと、交感神経優位の状態になります。

交感神経が活発に活動しているので、一時的には体温37度くらいまで上がり、やる気に満ちた気分になります。しかし、それが行きすぎると、やがて交感神経優位タイプの疲れゾーンに入ります。

この状態では、血流が滞り、体温は下がっているはずです。

さらに平熱が36度を割り込み、低体温になると、病気の世界に入っていくのです。リンパ球の割合としては、30%を割ると、この世界に入ると言えます。
ベストのラインよりも副交感神経が優位な状態になって、活動量が減るので、体温は下がる一方になります。こちらも、行きすぎると副交感神経優位タイプの疲れゾーンに入り、体温が36度を割り、リンパ球の割合が50%を超えるあたりから、病気の世界に入っていきます。

37度から36度までの範囲が「長寿の体温」です。リンパ球が多い状態で体温が正常範囲内にあれば、ウィルスなどの外敵や、がんなどの異常な自己細胞を排除しやすい状態となるからです。

この状態は、適度に交感神経を刺激し、その後は副交感神経優位の状態の休みを入れるというメリハリの利いた生活をしている理想的な状態だと言うことができます。

このように、体温の数値は、免疫力がどれくらいあるのかを、如実に表しています。
また体温は、エネルギー代謝の状態も表しているので、非常に大切です。体温を見れば、疲れのレベル、病気かどうかがわかると言っても過言ではありません。

現代人は、体温に対して、あまり注意を払わない傾向にありますので、深部体温37.2度、腋高体温36.5度という数値をよく覚えておき、努めてこのレベルになるよう、日常の生活で注意を払いましょう。お年寄りになると少し低体温ぎみで健康な人も出てきますので、それはそれでいいでしょう。
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そして腸内環境を整えることが大切です。
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エネルギー代謝システムを利用する

体の中のさまざまな化学反応

まず、「エネルギー代謝のシステム」についてです。このシステムが、疲れを感じるプロセスに直接的に関わっており、このプロセスがうまく働かなくなると、疲れを感じたり、疲れの回復が遅れたりします。

簡単に言うと、エネルギー代謝とは、一言で言えば体の中でさまざまな化学反応を起こすことで、活動に必要なエネルギーを得る働きのことです。

エネルギー代謝を行うためには、糖と酸素が必要です。

まず、食べ物を摂り、肝臓などで処理して糖に変えます。それを呼吸で得た酸素で燃焼させ、細胞が生きていくためのエネルギーや、筋肉を動かして活動するためのエネルギーを得るわけです。

材料は糖と酸素ですから、血液中や各組織に糖と酸素が不足してくると、体がそれを察知して疲れの感覚が生じます。逆に、元気いっぱいの時は、両方が満ち足りている状態です。食べ物から糖を取り出したり、糖と酸素からエネルギーを取り出したりする際には、酵素と呼ばれる触媒が働きます。

これは、生物の体の中でつくられるたんばく質性の物質で、体の中で行われるほとんどすべての代謝に問わっています。酵素の働きなくして、私たちが生きていくことはできません。

そして、エネルギー代謝の過程では、疲労物質と呼ばれるもののひとつ、乳酸が生み出されます。この乳酸が体内にたまると、細胞の活動が滞ったり、筋肉が収縮する能力が低下するので、疲れの感覚が生じることになるのです。

血流のいい人は疲れないし、太らない

体の各組織に糖や酸素を運んだり、乳酸を押し流したりするのは、共に、血液の働きです。ですから、血流のいい人は疲れにくく、疲れが出ても、比較的早い時間で疲れが回復することになります。

逆に、血流が悪い人は、疲れやすい人、疲れが取れにくい人と言えるでしょう。血流は、エネルギー代謝を支え、疲れをためないために、非常に重要な役割を果たしていると言えるのです。

血流はまた、体温を保つうえでも非常に重要です。血流は、体のさまざまな場所で発生した熱エネルギーを、体の隅々にまで届けるからです。なぜここで体温を持ち出したかというと、体温もまた、エネルギー代謝を維持するのに不可欠だからです。

ほとんどすべての代謝は、酵素という触媒が関わって行われているのですが、この酵素の働きの度合いを決めるのが、体温です。

私たち人間の体の中で、酵素の働きが最大になるのは、体内の温度が、37・2度の時です。「それは微熱がある状態じゃないか」と思われるかもしれませんが、内臓などがある体の内部の温度(深部体温)です。

深部体温が37.2度の時、舌下や直腸の体温は、だいたい0.5度くらい低い、36.5~36.7度くらいになります。

私たちが普通に体温を測る時には、わきの下(腋裔)で測りますが、ここはさらに、0.5度ほど低くなり、36.2~36.5度になります。

体温は、体表に近づくにつれて、外気などの影響で低くなるわけです。このように血流が代謝を支え、体温を保ちます。その体温もまた、代謝を支えます。体温と血流によって、代謝が滞りなく行われていれば、私たちは疲れにくくなり、疲れをためない体質になることができるというわけです。

血流が滞っている人は体温が下がりがちです。体温が下がると、体のエネルギー効率が下がります。エネルギーを、活動のためにでなく、まず冷えている体を温めるために使わなくてはいけなくなるからです。

近年では、冷房を利かせすぎ、冷たい飲み物や食べ物を安易に摂るなど、冷えに無防備な人が増えていますが、こういう人は、みずから疲れやすい体質に陥っていると言えるでしょう。

さて、自律神経とエネルギー代謝のシステムの密接な関係、さらにそれらが疲れとどう関わっているのかが見えてきたのではないでしょうか。

つまり、自律神経のバランスが取れていると、血流がよくなり、体温も上がり、疲れにくくなります。そもそも自律神経は、代謝が最も効率よく行われる深部体温37.2度を恒常的に保てるように、体温をコントロールしようとしています。

ですから、自律神経のシーソーがきちんと機能している場合は、血流も体温もよい状態で保たれます。たとえば、交感神経が優位な状態が続き、血流が滞って体温が下がったとします。そんな時でも、休息を取って、副交感神経を優位にすれば、血管が拡張することで血流が回復し、体温も上がってポカポカしてくるはずです。

食後に、体がポカポカしてくるのが、いい例です。また、ラクすぎる生活で副交感神経優位が続いても、活動を始めて交感神経を働かせれば、筋肉から熱エネルギーが発生し、血管の過度の拡張が改善されることにょって血流が促され、体温も上がってきます。
結局、自律神経のシーソーをきちんと機能させるような、メリハリの利いた生活が、血流と体温を保ち、代謝を促進して、疲れない、疲れても回復しやすい体をつくるのです。